昭和の終わり、婚礼家具を揃えるのが当たり前だった時代
私が結婚したのは、昭和の終わり頃でした。
当時は、
嫁入り道具として「婚礼家具○点セット」を揃えることが、
ごく当たり前の時代です。
私も、親のおかげで、
人前で恥ずかしくない婚礼家具を選ぶことができました。
ドレッサーはいらないと判断した理由
ちょうどその頃、
先に結婚した友人が、こんな話をしてくれたのです。
「ドレッサー(鏡台)は、買わなくてもよかった。」
「洗面所の鏡で十分だし、部屋が狭くなって後悔してる」
「買わなくていいと思うよ」
その言葉が、妙に心に残りました。
確かに、
鏡を見るだけなら洗面所で足りる。
使わない家具が場所を取るのは、避けたい。
そう考えて、私は
ドレッサー(鏡台)が含まれていない婚礼家具セットを選びました。
それは、
ケチったわけでも、常識を知らなかったわけでもありません。
当時母は入院中で、
父は、母のように結婚の段取りに詳しいわけではありませんでした。
それでも父は、
「娘が恥をかかないように」と、
立派な婚礼ダンスを揃えられるだけの資金を、
私に渡してくれたのです。
その気持ちが、ありがたくて。
だからこそ、
これ以上、負担をかけるようなことはしたくありませんでした。
「婚礼家具としてドレッサーを持ってこい」と言われた日
ところが、その話を聞いた夫の姉が、言ったのです。
「鏡は女の命というの」
「嫁ぐときには、鏡台(ドレッサー)は持ってこないと」
さらに、
「新築の一戸建てなんだから、置き場所はあるでしょ」と。
その言葉を聞いた瞬間、
私は何も言えなくなりました。
頭の中では、
「必要ないと思って選んだこと」
「父の気持ち」
「もう一度、別に買うことになる現実」
いろいろな思いが一気に浮かんだのに、
言葉にはなりませんでした。
資金のことを、
父には言いにくい。
でも、
「家を建ててもらっている立場」
「嫁という立場」
そうしたものが、
私の口を塞いでしまったのです。
その場では、
曖昧に笑って、話を終わらせました。
けれど家に帰ってから、
じわじわと、心が重くなってきました。
ドレッサーの話なのに、
苦しかったのは、そこではありません。
私が引っかかっていたのは、
「自分で考えて選んだ判断が、最初から否定されたこと」
そして、
「家を建ててもらっているのだから従うべき」「鏡は女の命」
「嫁ぐなら、こうするもの」
それは、
その人が大切にしてきた価値観です。
でも、それを
そのまま私が引き受けなければならない理由は、
本当はありませんでした。
あのときの違和感は、
私と相手の価値観の境目が、
ふいに踏み越えられた感覚だったのだと思います。
振り返ってみると、
この感覚は、ドレッサーのことだけではありませんでした。
家を建てるときも、
間取りやキッチンの動線について、
私の要望はいっさい受け入れてもらえませんでした。
どんな暮らしがしたいか、
毎日どこで立って、どんなふうに動くのか。
間取り図をみて夢を語り合ったこともありません。
見せてもらったこともありません。
そうしたことよりも、
「こうするものだから」
「前から決まっているから」
「オレが家を建てるのだから、文句を言うな」
いつもこんな言葉がありました。
数十年後、「鏡は女に命」なんて誰も言っていなかった
あれから数十年が経ち、
義理の姉の娘――姪の結婚が決まりました。
ふと、
あのときのことを思い出して、
私は義姉に聞いてみました。
「○○ちゃんは、ドレッサー買いましたか?」
すると義姉は、
とてもあっさり、こう言ったのです。
「今はね、
ドレッサーを嫁入り道具にはしないらしいの」
「娘が要らないって言ったから、買ってないのよ」
その言葉を聞いて、
私は心の中で、
静かにうなずいていました。
やっぱり、そうなのだと。
自分の判断を大事にしていい
あのとき、
「鏡は女の命」
「嫁ぐなら、こうするもの」
そう言われた価値観は、
絶対の正解ではなかった。
ただ、
その人が生きてきた時代の
「常識」だっただけなのです。
そして、
どんな時代であっても、
暮らしの中で一番大切なのは、
自分が納得して選んでいるかどうか。
人にどう思われるかより、
誰かの期待に応えることより、
自分の感覚を信じること。
たとえ、
それで誰かに少し嫌われたとしても、
自分が納得しているなら、
それでいいのだと思います。
あの頃の私は、
それができませんでした。
でも今なら、
あのときの自分に、
こう言ってあげられます。
「あなたの判断は、間違っていなかったよ」と。
もしあなたが、
周りの声に流されて、
自分の気持ちを後回しにしているなら。
一度立ち止まって、
「私は、どうしたい?」
と問いかけてみてください。
答えは、
誰かの常識の中ではなく、
あなたの中にあります。
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もし、この記事を読んで
「自分のことかもしれない」と感じたところがあったら。
それは、
あなたの中にも
ずっと飲み込んできた思いや、
言葉にならなかった違和感があるからかもしれません。
お試しカウンセリングでは、
何が正しいかを決めたり、
答えを急いだりはしません。
ただ、
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「そうするしかなかった理由」を
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まとまっていなくても構いません。
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