親の老いに直面したとき、
同じ状況でも、消耗の度合いには大きな差が出ます。
比較的落ち着いて向き合える人もいれば、
気力が削られ、心がすり減っていく人もいます。
この違いは、性格の強さではありません。
多くの場合、
心の境界線の持ち方の違いです。
■ 「全部、自分がやらなければ」が動き出す人
強く疲れる人の心の中には、
こんな言葉が動きやすくなります。
- 自分がやらなければ
- 任せてはいけない
- ちゃんとしなければ
- 私が支えなければ回らない
責任感が強く、まじめで、
人に頼るのが苦手な人ほど、この傾向があります。
これは長所でもあります。
けれど親の老いという長期テーマでは、
この姿勢がそのまま消耗につながります。
■ 親の感情まで背負ってしまう人
もうひとつの特徴があります。
それは、
親の気持ち=自分の責任になる
という反応です。
- 親が不安そう → 私が安心させなければ
- 親が怒る → 私の対応が悪い
- 親が落ち込む → 私のせいだ
こうして、相手の感情が
自分の課題にすり替わっていきます。
でも本来、感情はその人のものです。
ここが混ざると、
心は一気に疲れます。
■ 境界線がゆらぐと何が起きるか
心理的な境界線とは、
ここから先は相手の課題
ここまでは自分の課題
という心の区切りです。
境界線が弱いと、
- 頼まれていないことまで背負う
- 先回りして抱え込む
- 断れない
- 休めない
- 頼れない
という行動が増えます。
結果として、
心配 → 過干渉
支えたい → 抱え込み
優しさ → 自己消耗
に変わってしまいます。
■ 「いい子役割」が再起動する
親の老いの場面で、
子ども時代の役割が再起動する人も多くいます。
たとえば:
- 親を心配させない子
- 手のかからない子
- 空気を読む子
- 親を支える子
昔はそれで生き延びられました。
でも今は、その役割が
あなたを疲れさせます。
大人のあなたには、
別の選択肢があります。
■ 助けることと、背負うことは違う
ここで大事な区別があります。
助けること と
背負うこと は違います。
助ける:
- できる範囲で関わる
- 協力を集める
- 分担する
- 相談する
背負う:
- 一人で抱える
- 断らない
- 限界までやる
- 誰にも頼らない
前者は支え合い。
後者は自己消耗です。
■ 境界線を引くことは「厳しさ」ではない
境界線を引くことに対して、
こんな不安を持つ人がいます。
冷たいと思われるのではないか。
見捨てたと思われるのではないか。
でも境界線は、冷たいから引くのではありません。
持続可能な関わり方です。
長く支えるために必要な距離です。
■ 感情を整理すると、関わり方が変わる
疲れきる前に必要なのは、
気合いではありません。
感情の整理です。
- 不安
- 怒り
- 罪悪感
- 義務感
- 恐れ
これらを言葉にして整理すると、
抱え込み → 分担
焦り → 優先順位
義務感 → 選択
に変わっていきます。
行動は、感情の整理のあとに整います。
■ 次回予告(最終話)
次回は最終話です。
「親の老いをきっかけに、自分の人生を取り戻す人がしていること」
親の変化を、
人生の再設計の入り口にする視点を扱います。
▶ 親の老いに直面したとき、人はなぜ焦るのか【第1話】
▶ 親の老いがつらい本当の理由【第2話】
▶ 親にもっとしてあげればよかったと苦しくなる理由【第3話】
▶ 喪失感・無力感から抜けるための心の整理【第4話】この記事
▶ 感情整理カウンセリングについて【第5話】
親のことで疲れきってしまうときは、
状況より先に、感情が限界になっています。
頭で整理するより、
気持ちを言葉にして整える方が早く落ち着きます。
感情整理ワークと対話セッションでは、
背負い込みのパターンを一緒にほどいていきます。




