人を呪わば穴二つとは、
人の不幸を願うのであれば、その報いが自分にも及ぶこと。
自分の墓穴も掘らなければならなくなると、
穴に墜ちることを覚悟しなければならないこと。
ある男性の被害者意識
昔付き合っていた彼女のことが
忘れられなかった。彼女を忘れるために
彼女とよく似た人と結婚をするが、
元カノのことがどうしても忘れられない。
元カノは既に結婚をして
子供が生まれていた。
夫の転勤で地方に移住していて
子育てをしながら家庭円満に暮らしていた。
風の噂で、元カノの幸せな暮らしぶりを聞き
男性は元カノと別れたことを後悔した。
元カノのことを思い出し、こっそりと涙する。
元カノとの幸せな生活を妄想する。
元カノの好きだった食べ物、癖
暮らし方、すべてを妻に求めるが
何も知らない妻は嫌がる。
やがて男性と妻とは、心の距離があく。
男性は、ますます元カノと幸せな生活を送っている
元カノの夫に嫉妬する。
不幸であるのは誰のせいでもない、自分のせいだ
「元カノはあんな男のどこかよかったのか」
「自分の方が彼女を幸せにできたはずだ」
「別れて、自分の元に戻ってきて欲しい」
元カノとは価値観の違いからお互いに納得したわかれだったのに、
今になって別れたことを後悔している男性。
「あんな男とは別れればいいのに」
「あんな男、元カノから捨てられればいいのに」
男性は、元カノを奪った(本当は奪ったわけではない)元カノの夫を呪う。
男性は元カノの住所を共通の知人に聞き出し
仕事を休んで元カノに会いにいく。
遠くから元カノをみつめ、
家路をたどる彼女の後をついていく。
そして一軒の家から聞こえる
子供の声、笑い声に嫉妬を覚え帰っていく。
男性の妻は夫が元カノに執着していること、
自分は愛されてはいないことに気づいていく。
私は夫の元カノの身代わりで結婚したのだ、と
察してしまったのだ。
家の中は、冷たく陰気だ。
人の不幸を願うと、自分が地獄におちる
妻はとうとう家を出ていった。
離婚届が送られてきた。
男性は、元カノの夫を呪いながら
自分自身の墓穴を掘っていた。
元カノは今も幸せに暮らしている。
妻は新しい生活に前向きに生きていく決意を持つ。
男性は、妻にも捨てられ、元カノの幻想に生き、
自分はなんて不幸なんだと、日々嘆きながら
男性は孤独に暮らしている。
不幸なんだと嘆く男性は、
自分が墓穴を掘っていたことにまだ気づいていない。
穴はもう一つ残っている。