夫や上司の言葉がつらい理由|「投影」という心のしくみで人間関係が楽になる

夫や上司の言葉がつらく感じるあなたへ

もし、あなたが
夫のきつい言い方や否定的な態度に傷ついていたり、
職場で細かなダメ出しをしてくる上司に疲れていたりするなら、
「投影」という心のしくみを知ることは、
人間関係を少し楽にする助けになるかもしれません。

まず、身近な人の言動を、少しだけ客観的に眺めてみてください。
その人の口調や態度は、
あなたにとって誰かに似た感じがしませんか。

子どもの頃に感じた感情が浮上してくる

たとえば、
厳しかったお父さんや、
いつも上から物を言ってきた兄弟、
あるいは怖かった先生――
そんな、子どもの頃に強い影響を受けた人物と
どこか重なって見えることがあります。

子どもの頃、
本当は悲しかったのに我慢したこと。
怖かったのに、何も言えなかったこと。
理不尽だと感じても、飲み込むしかなかった思い。

そうした感情は、
時間が経っても消えてしまうわけではなく、
心の奥に静かに残り続けます。

昔感じたつらかったこと

そして大人になった今、
似た雰囲気を持つ人と出会うと、
そのときの感情がふっとよみがえり、
目の前の相手の言動が
必要以上に刺さってしまうことがあるのです。

上司のダメ出しが、
子どもの頃に感じた「否定された痛み」と重なったり、
夫の言葉が、
昔感じた「わかってもらえなかった悲しさ」を
呼び起こしたりすることもあります。

投影という心のしくみ

このように、
過去に感じた感情や記憶を、
無意識のうちに今の人間関係に重ねて見ることを
心理学では「投影」と呼びます。

潜在意識は、
過去と現在をはっきり区別することが得意ではありません。
そのため、
子どもの頃の感情が、
まるで「今、起きていること」のように
感じられてしまうのです。

投影を知るメリット

では、この投影というしくみを知ると、
どんなメリットがあるのでしょうか。

●まずひとつ目は、
「全部、相手のせいだ」「私が弱いからだ」
という極端な考えから、少し距離を取れることです。

●ふたつ目は、
相手を変えようと必死になる前に、
「これは昔の感情が動いているのかもしれない」と
自分の内側に目を向けられるようになること。

●そして三つ目は、
必要以上に傷つかなくなり、
自分を守る選択がしやすくなることです。


投影に気づくことは、
相手を許すためでも、我慢を続けるためでもありません。
「これは昔感じた、心の痛みなんだ」と理解することで、
今の自分がどうしたいのかを
落ち着いて考えられるようになるための第一歩なのです。

人間関係がつらいと感じるとき、
そこには必ず、あなたの心が守ろうとしてきた歴史があります。
投影という心のしくみを知ることは、
その歴史を否定せず、
今のあなたに合った関わり方を選び直すための
やさしいヒントになるのです。

投影を知った後はどうするの?

では、
投影に気づいたあと、私たちはどうしたらいいのでしょうか。

多くの人はここで、
「じゃあ、相手は悪くないの?」
「私が我慢すればいいの?」
と混乱してしまいます。

でも、投影に気づくというのは、
相手を正当化することでも、
自分を責めることでもありません。

「過去ではない“今”の自分に戻ること」
いったん立ち止まれるようになること。
それが、最初の大きな変化です。

たとえば、
夫の言葉に強く反応してしまったとき。
上司の一言が、頭から離れなくなったとき。

傷ついた心を受け入れる

その瞬間に、
「また同じことを言われた」
「やっぱり私はダメなんだ」
と結論を出す前に、
こう問いかけてみてほしいのです。

「これは、いつ頃から感じてきた感情だろう?」

すると、
子どもの頃に我慢した記憶や、
否定されたときの感覚が
ふっと浮かんでくることがあります。

そのとき大切なのは、
分析することではなく、
正解を出すことでもなく、
ただ気づいてあげることです。

「ああ、あの時の私は、
 本当は悔しかったんだな」
「怖かったけど、言えなかったんだな」

そうやって、
当時の自分の感情に
今のあなたが気づいてあげるだけで、
心は少しずつ落ち着いていきます。


不思議なことに、
それだけで、
目の前の相手の言動が
以前ほど刺さらなくなることもあります。

なぜなら、
相手に向いていたエネルギーが、
自分の内側に戻ってくるからです。

投影とは出来事を客観的にみること

投影に気づくとは、
「相手を見る力」をやめて、
「自分の心を見る力」を取り戻すこと。

その結果として、
距離を取る選択をする人もいれば、
伝え方を変える人もいます。
関係を続ける人もいれば、
終わらせる人もいるでしょう。

どれが正解か、ではありません。
選べるようになることが、大きな変化なのです。

人間関係で何度も同じ苦しさを感じるとき、
そこには必ず、
あなたの心が長い間抱えてきた感情があります。

大人になった今だから傷ついた心を癒やせる

投影に気づくことは、
その感情を終わらせるための入口。
そして、
「私はもう、あの頃の私ではない」
と、自分に戻ってくるための道しるべです。

もし一人で向き合うのがつらいときは、
誰かと一緒に整理していくという選択もあります。
心のしくみを知った上で、
自分の感情を安全に扱うことができれば、
人間関係は、少しずつ違う景色を見せ始めます。