「断れなかった私が悪い」
「嫌と言えない性格だからだ」
そうやって、自分を責めがちです。
けれど、心の中で本当に起きていることをよく見てみると、
少し違う景色が見えてきます。
多くの場合、
断れなかったのではありません。
断らなかったのです。
しかもそのとき本人は、
「無理をしている」という自覚がほとんどありません。
「これくらいなら大丈夫」という心の見積もり
たとえば、
買い物に行く途中で
「ついでにこれもお願いできる?」
と頼まれた場面を想像してみてください。
その瞬間、頭に浮かぶのは、
・これくらいならできる
・今までもやってきた
・私がやった方が早い
そんな言葉です。
これは、
自分の余力を少し多めに見積もっている状態です。
この段階では、
「嫌だな」「疲れそう」「時間がギリギリだし」という感情よりも、
・期待に応えなきゃ
・役に立ちたい
・空気を壊したくない
という思いの方が前に出ています。
特に、
・責任感が強い人
・頼られることに慣れている人
・人の気持ちに敏感な人
ほど、
自分の気持ちではなく、「役割」で判断してしまいます。
現実が、心の見積もりを追い越すとき
ところが、現実は予定通りには進みません。
・仕事が増える
・時間が足りなくなる
・相手の都合で予定が変わる
まるで、
「これくらいなら持てる」と思って持った荷物に、
後からどんどん荷物を乗せられていくようなものです。
そして、ある時点で気づきます。
「思ったより重い」
「こんなはずじゃなかった」
でもその頃にはもう、
・引き受ける前提の関係
・期待される立場
・今さら断りにくい空気
が、しっかり出来上がっています。
心にたまっていく、不公平感
ここから、心の中で何が起きるか。
自分はあくせく動いているのに、
仕事を頼んだ人は余裕そうにしている。
その姿を見るたびに、
「なんで私ばっかり?」
「当たり前みたいに使われている気がする」
そんな怒りや虚しさが、
少しずつ、でも確実にたまっていきます。
限界を超えてからの「NO」は、突然に見える
何度も我慢を重ね、
心が限界に近づいたところで、
やっと「もう無理です」と伝えたとき。
本人にとっては
長い我慢の末の決断でも、
相手から見ると、こう映ることがあります。
「急に冷たくなった」
「突然拒絶された」
ここで関係は一気に崩れ、
本人の中には、
・相手への怒り
・自分への後悔
・「なんで私ばっかり」という思い
その両方が残ります。
これが、
「いい人」でい続けた人が、最後に心が折れる流れです。
これは弱さではなく、やさしさの使い方の問題
ここで大切なのは、
やさしさや思いやりを否定しないことです。
多くの人は、子どもの頃に学んできました。
・手伝うと親が助かる
・頑張ると喜ばれる
・空気がよくなる
そうやって
「頑張る私」で関係を保ってきたのです。
そのやり方が、
大人になっても無意識に続いているだけ。
ただし、
仕事や大人の人間関係では、
子どもの頃と同じやり方は通用しません。
やさしさは、
自分の余力を無視して使い続けると、
自分を壊す方向に向かってしまうのです。
心を守るために必要なのは、早い段階で立ち止まること
本当に大切なのは、
限界を超えてから断ること
ではなく、
「まだ大丈夫」と思っている段階で立ち止まること。
・少し違和感を覚えたとき
・一瞬迷ったとき
その小さなサインを無視せず、
小さな「できません」を出すことです。
それは冷たさではなく、
関係を長く保つための選択。
やさしさは、
自分をすり減らす場所ではなく、
別の形で、ちゃんと発揮することができます。